もっとむずかしいのは、もう一段深いレベルの違いだ。日本語の音は、比較的シンプルで規則的。音のユニットは、母音のみ(a、iなど)か、子音+母音(ka、saなど)の二つが基本形だ。一方、英語では「spring」のように、母音(i)の前後に複数の子音(sprとng)が続くことがよくある。子音の連続に慣れていない日本人には聞き取りにくく、発音するときも子音の間に存在しない母音を挿入しがちだ(「spring」が「supuringu」となる)。
しかも英語では、語末と語頭の子音が連結して発音が変わることも珍しくない。「英語の子音には多くのマジックがあるのに、あまり教えられてこなかった」と、東京国際大学の田辺洋二教授(英語教育学)は言う。「頭で理解している音とは違う実際の音声のデータベースを、たくさんの実例を聞いて脳に蓄える必要がある」
リズムの違いもハンディになる。話し言葉は、単語間の境目がない音の連続体。私たちは言語のリズムに基づいて、音の流れのなかから単語を抽出している。
問題は、その際のルールが言語によって異なり、外国語を聞くときにも母語のルールを適用してしまうことだと、獨協大学の大竹孝司教授は言う。マックスプランク心理言語学研究所(オランダ)のアン・カトラーらが行った研究の結果、英語ではストレス(強調)を手がかりに単語を切り出していることが明らかになった。
一方、日本語ではモーラと呼ばれる「拍」で音を切り分ける(「ニホンゴ」は4拍という具合)。「英語を聞くときも日本語式のルールで単語を抽出しようとするから、うまく聞き取れない」と、大竹は言う。